創立15年チャレンジが反映される職場

児童養護施設 カルテット

施設名 児童養護施設 カルテット

法人名 社会福祉法人浦和福祉会

住 所 さいたま市桜区下大久保1542-4

H P http://urawaf-quartet.jp/

施設長:大原 岳夫

 

「なかなか人の人生に関わったりはできないけれど、児童養護施設は「関わることができる場所」です」

 

プロフィール

 

大学で福祉の科目を履修はしましたが、多くの施設長さんや職員さんのようには勉強をしてきませんでした。大学卒業後、就職したもののうまくいかなかった中、自身の名前の「岳」の由来となった山との出会いから山小屋で働くことになり、その後スキーの教員も経験し指導法で認められるまでになりました。この5年間で自信を取り戻しました。しかしスキー演習中に大きな事故に遭い半年に及ぶ入院生活の中でさまざま人生を見つめることになります。

 

スキーを教えた子どもたちが上達し喜んでくれたこと、人の為になるようなことをしたい、子どもに関わる仕事がしたいと思いが定まり縁あって東京の児童養護施設「星美ホーム」に学習指導員として入職しました。理解ある園長先生に折々に励まされて信頼をいただき「冒険教育」などを外部研修で学ぶチャンスも与えられました。

 

在職12年の中で野外活動やスキー講習の経験を現場に生かしました。現在では制約があって実施が困難ですが、在所児童たちが糸魚川から赤羽までの360キロメートルを歩いて戻ってきた経験は子どもたちの自信と、地域、小学校の信頼を勝ち取ったエピソードとなっています。平成16年(2004年)、5つの施設から集まった創設メンバーで、さいたま市に新しい児童養護施設カルテットを運営開始、主任に着任しました。その後施設長に就任し現在に至ります。導かれるままにきた道のりです。

 

 

 

冒険プログラム

 

東京の星美ホーム在職中に外部研修で「冒険教育」に出会いました。

 

冒険プログラムのすごいところは、今その瞬間にやる気になればすぐにできる、できてその効果や成果が大きいところです。

 

「生きることへの執着や欲望を取り入れた冒険教育」、施設の児童にはこれが合っていると思います。施設を出た後、社会に出てくじけてしまったり、諦めてしまったりすることが多いのが現実。愛着形成とともに日常の中でチャレンジすること=冒険教育を取り入れています。

 

 

 

児童養護施設の魅力

 

「他人の生き方に関われる」。なかなか人の人生に関わったりはできないけれど、児童養護施設は「関わることができる場所」です。客観的には成功の可能性が低い子どもたちが多い。その子たちが成長して自分の人生の成功をつかんで幸せになってほしい。そうした場面に立ち会えるよう関わることが私たちのやるべき事じゃないかと思います。激流の中、歯を食いしばってゴールできた、達成した顔を見ることができるのは幸せです。

 

 

 

 

学生さんに向けて

 

想いってすごく大切です。想いを持っている人がいれば後は未熟でもためらわず門を叩いてほしい。施設で働くうえで求められる能力や技術は後から身についてきます。


ベテラン職員:上奥 渉

 

「さまざまな感情のほとばしる体験は児童たちの己への自信、自己肯定感に繋がると感じています」

 

保育士を目指した理由

 

中学校時代はいわゆるやんちゃで、高校進学せず建設業に就職したものの横道にそれてしまいました。更生の教育を受けている中で障害者施設でボランティアをしているときに感謝されたときに感じたうれしい気持ちや、自分を見放さないでいてくれた両親への感謝の気持ち、水谷修先生の「夜回り先生」を読んだ影響などから、自分自身もやりがいを感じながら人の役にたてる仕事に就きたいと思うようになりました。

 

子どもたちの色々な葛藤があって横道にそれたり、非行に走ることに向かい合うことができるのは、(今では後悔も大きいですが)経験を活かせていると思います。

 

 

 

大原施設長の冒険プログラムに賛成!

 

 

 

 

自分自身も幼少期から川や野原で遊び、沢蟹を取ったり、高い山に泣きながら登ったことが強く記憶や体感として残っています。冒険プログラムを恐怖感に負けずにやりぬいた達成感、同時に感じる「生きているぞ!」という安心感や喜び、さまざまな感情のほとばしる体験は児童たちの己への自信、自己肯定感に繋がると感じ、このプログラムの必要性を感じています。

 

 

 

さらに愛着障害、発達障害などが増えている現状から、職員の経験、知識のアップデートはとても重要です。

 

 

 

 

ユニットでは個別の関わりを大事にしています

 

児童の人数が多いとできるようになった瞬間や褒める場面を見逃してしまうのが難しいところです。職員の数が圧倒的に足りないのが現状です。

 

社会全体で児童養護施設の現状を理解して子どもが安心できて安全な場所で過ごせるようになってほしいと思います。施設のご飯おいしかったなとか、ここにいるときに僕の事を考えてくれてありがとうと言われた時嬉しかった、こういうような気持ち、愛された感覚を持って巣立ってほしいなと思います。

 

さらに愛着障害、発たち障害などが増えている現状から、職員の経験、知識のアップデートはとても重要です。

 

 

 

学生さんへカルテットの良さ

 

他の施設にはない活動や体験ができます。冒険プログラムなどを通して普段子どもたちが見せない一面だったり普段気づかないその子の良い所がみられたりします。子どもたちと一緒に成長できる環境です。(職員になった人は42km歩く)ナイトハイクをきっかけに子どもと仲良くなって卒園した今でも相談してくれる、子どもとの距離を縮める関係が深まる良い行事です。キャンプ好きな方大募集。子どもの情報を全体に共有するために週に1回の会議。新しい職員からに発信するなど意見を出し合う場面が多くて全員が積極的な環境です。


若手職員:榎 若菜

 

「私たち職員は子どもたちの世界の幅を広げてあげられるような人間性、知識を磨いていきたいです」

 

働くことになったきっかけ

 

カルテットには大学卒業し新卒として入職しました。出身は岩手県です。化粧をする、エプロンをする、標準語、この3つで仕事スイッチが入ります。

 

東日本大震災で家族を亡くした経験があります。大学の教育実習のときに、カルテットでボランティアを経験。父親のPTA活動で地元の児童養護施設に出入りした経験もあり、何か自分にできること、子どもに関わることを模索していたなか、大原施設長に声を掛けられ入職しました。

 

 

 

うれしいエピソード

 

1年目に高校受験生が4人いた時期がありました。私の入職と同じ時期に入所した中学3年生男子には年齢が近いこともあり、高校受験のアドバイスをしました。

 

学校で中学3年生が親に手紙を書く授業あったのですが、「ちよさん(榎さんのニックネーム)楽しみにしていてね!卒業式の日!」と何のことかわからず何回も言われました。そして中学卒業式の日、手紙を私の所にもってきてくれて「1年間で1番お世話になったちよさんへ。一緒に勉強や高校見学行ってくれた事。なんだかんだ1番に話すことできたよ。ありがとう」

 

その時にこの手紙を読んで救われました。頑張ってきてよかった、また頑張ろう、その子の為にも新しい子や子どものために頑張ろうって思えた。力不足は3年目でも感じるけど、卒園するまで見守っていきたいなって思える子と出会えたのは嬉しいことです。児童の人生の為に自分が動いたり言ったりしたことや、関わり方で良い方にも悪い方にも影響があります。児童は出会った大人によって人生が大きく左右されます。

 

通常の家庭で父や母から教わるものの代わりに、私たち職員は子どもたちの世界の幅を広げてあげられるような人間性、知識を磨いていきたいです。学生時代に気づけなかったことを児童たちと一緒に体験する中で成長していきたいと思っています。

 

 

 

学生に向けて一言

 

この仕事のいいところは、子どもたちの純粋に笑っている姿を見られることや、その先の幸せに関われること。

 

その人自身で感じるこの仕事の魅力を感じながら一緒に成長したいです。カルテットでは職員同士の繋がりも強くお互いがサポートし合う安心して働ける環境です。先輩たちがいたから私は働き続けることができています。カルテットで良かったなと実感しています。