伝統と創造、変革の推進力は職員から

児童養護施設 愛泉寮

施設名 児童養護施設 愛泉寮

法人名 社会福祉法人愛の泉

住 所 埼玉県加須市土手2-15-57

H P http://www.ainoizumi.com/aisen/index.html

施設長:藤井 美憲

 

「全グループ20人くらいの中学生を対象に「中学生会議」というのを設けています」

 

 

 

施設について

 

今年73年目を迎えます。

 

教会で戦災孤児を保護する活動から始まりました。

 

5年で保育園や乳児院ができ、その10年後には老人ホームもできました。今の建物は3代目で2代目までは大舎制です。

 

大舎だけでは限界を感じ、地域の協力のもと国の制度にのっとり自活訓練型の分園を作りました。

 

現在地域小規模5つ、ファミリーホームが1つあります。小舎制になり、大舎制の時より児童が落ち着いて安定して生活しています。

 

また独自に返済不要の給付型奨学金制度のいずみ奨学金を作りました。この制度により進学する児童が増えました。収入源としては、バザーやチャリティーコンサート、後援会の方々の献金によって賄われています。今後、地域の子どもたちにも開放するこども食堂も実施していきたいと思っています。

 

 

 

中学生会議

 

特色として、全グループ20人くらいの中学生を対象に「中学生会議」というのを設けています。高校生にもなれば、アルバイトや自分の生活に追われる児童が多いのですが、中学生は一番難しい年齢です。思春期でもあり自己表現ができず暴力などの行動で表すような児童もおり、大切な時期です。

 

中学生のうちからきちんと話し合いの場を設け、意見を聞くことで児童が責任と主体性をもって生活できるようにしています。

 

グループ内で解決できないことを、全員で話し合うことにより解決できることも多々あります。年に2回は児童が企画運営をして登山などレクリエーションを行っています。卒園生を呼んで在園児に話をしてもらう機会なども設けています。

 

 

 

学生に向けたメッセージ

 

学校で児童養護施設を学ぶ機会は少ないと思います。児童養護施設に来る前に、まず興味関心をもって見学だけでもして欲しいです。学校で十分学べないことを1日かけて、実習のオリエンテーションをやります。

 

児童は必ず面倒を見る人が必要になってきます。児童に関わるということは、人生や人としての成長、人格形成に関わる大切な仕事です。他の仕事にはない価値を見出してください。


ベテラン職員:相澤 郁夫

 

「すべては子どものため、職員が前向きでいられることが安定した姿勢につながると思います」

 

 

 

児童養護施設で働くきっかけ

 

中学3年生の時に引っ越しをし、そこで初めてクラスメイトに児童養護施設で暮らす友だちがいることを知りました。今まで親がいる生活が当たり前で、親と暮らせない児童がいるという状況を想像したこともなく、衝撃を受けました。

 

それ以降子どもと虐待などのニュースは無意識にキャッチしていて、見るたびに何か力になりたいと思うようになりました。その頃児童養護施設で働きたいと考えていて、大学の就職科にあったこの施設を選びました。

 

 

 

施設での働き方

 

変形労働制を採っています。メリハリをつけることと、残業を減らす方向で進めています。勤務がバラバラでプライベートな時間がとりにくく、バランスをとるのが難しいのが実情ですが、職員の気持ちが安定していれば子どもは健康に育つと考えています。

 

そこできちんと時間どおりに上がれることと残業も調整し職員のストレスにならないよう極力配慮しています。すべては子どものため、職員が前向きでいられることが安定した姿勢につながると思います。

 

何度も辞めようと思ったことがあります。でも性格として、選んだからには途中で放り投げることが許せなかったことと、辞めることで残される児童が傷ついてしまうのではという思いでここまでやってきました。

 

7、8年目くらいで辛いと思うことが少なくなり、純粋に児童のために何ができるのか考えられるようになりました。

 

今では対応方針に確信が持てるようになってきたのが自信につながりました。

 

 

 

学生に向けたメッセージ

 

大変だし、きついこともある仕事なので、やはりきちんと勉強して責任の重さを分かった上で、めげずに覚悟を持って入ってほしいです。

 

イメージやうわさに惑わされず、現場を見て判断してください。児童の人生を担う重大な責任の向こうにあるもの、少しずつ成長して前に進んでいるのを見たりできるのは短期間では無理です。そこを知った時、とてもやりがいを感じる仕事だと思います。


新人職員:小林 遥香

 

「大人にとって5年働くというのは長いですが、児童にとってはたった5年です」

 

 

 

興味を持ったきっかけ

 

中学生のころに高齢者福祉に興味を持ちました。大学に入ると高齢者施設のボランティアや学習ボランティアをやっていました。

 

勉強を進めていくうちに相談援助というものを知り、社会福祉に興味を持ち、大学で児童分野があることを知りました。虐待などで苦しい思いをしている小さな子どもをなんとかしたいと思ったのです。

 

 

 

印象に残っていること

 

職員年数が上がるにつれて児童に伝えたいことが増え、児童の成長とともに、子どもに教えてもらうことが大きいです。

 

児童を通して常に自分と向き合わないといけない仕事だと実感しています。児童から学ぶことは多く、まず大人が正直にならないといけないと思います。

 

児童がこの施設を出た時、きちんと「ごめんね」と「ありがとう」が言えること、人に頼ったり頼られたりすること、両方ができて自立に繋がることだと思っています。

 

児童から感謝の手紙をもらった時、優しい声掛けをしてもらう時や、たくさん話をしてくれた時など本当にうれしいです。

 

大人にとって5年働くというのは長いですが、児童にとってはたった5年です。

 

児童の成長を長く見守れるように頑張りたいと思っています。

 

 

 

学生に向けたメッセージ

 

働く上で環境というのは大事だと思っています。支えてくれる雰囲気や人が大切です。

 

相手は子どもだし一人の人間なので、仕事に不安を覚えるかもしれませんが、この愛泉寮の先輩職員たちは勤続年数が高く、それだけ仕事のしやすい職場だと思います。グループが違う職員同士でも声を掛け合ったり気遣いがあったり、人との繋がりは働く上でも大事だと感じました。

 

どんなことがやりたいかを自分の中で明確にしておいて、悩んだときにそこに戻れる原点を作っておくと仕事も頑張れると思います。